「おはようございます」
食堂に入って朝の挨拶をする。すでにお父さん、お母さん、鈴蘭が席に着いて各々朝食を摂っていた。
「おはよう、つぼみ」
「おはようございます」
お父さんはコーヒーカップから口を離して私に笑いかける。
続いて鈴蘭が少し慌てた様子で声をかけてきた。
「つぼみちゃん! 昨日は車まで運んでくれて本当にありがとうっ。あたし、生徒会室でいつの間にか寝ちゃったみたいでっ……」
「いえ、気にしないでください」
言いながら私はリュウが引いてくれた椅子に腰かける。
テーブルに並べられるのは、彩り豊かで栄養バランスが完璧に整えられた朝食。厨房の使用人が手間をかけて作ってくれている。
「まあ、鈴蘭。居眠りだなんて気をつけなさいて」
「大丈夫だよママ。あたしには生徒会のみんながいるもの」
そんな二人の会話を横目に、私はサラダジュースを飲み干した。
「つぼみ、調子はどうだ?」
「はい、最近は学校生活にも慣れてきました。お気遣いありがとうございます」
「いや、そうではなくてだな……」
「――ちょっと、あなた。娘だからって甘やかさないでちょうだい」
その声が聞こえた途端、空気が冷たくなる。
そっと横を向くとお母さんが私を軽く睨んでいた。
「一年間も何も言わず家を出た者のことなんて、放って置いたらいいわ」
「そんな言い方をするんじゃない」
「ふ、二人とも……落ち着いて」
鈴蘭は思い詰めた顔をして仲裁に入る。
私がいると、いつも重い空気を作ってしまう。
けれど取り繕ったところでお母さんの私に対する当たりが強いのは変わらない。むしろ余計にややこしくしてしまう。
「ごちそうさまでした。私は先に失礼します」
口を拭ったナプキンを卓上に置くと、リュウはまたタイミング良く椅子を引いてくれた。
ああ、野菜ジュースしか飲めなかった。しょうがないのでお昼にリュウが作ってくれたお弁当を食べてお腹を満たそう。
「あ、あたしも行かないと……! パパママ行ってきますっ」
鈴蘭も急いだ様子で席を立った。
そんなに慌てなくてもゆっくり食べれば良いのにな。私は車で待っているつもりだったのに。



