「……それは、なんの話しですか?」
ひしひしと伝わる鋭い空気の棘に、堪らず私は尋ねた。
しかし誰ひとりとして口を開くことはない。
「──なにかあったのか」
そのとき、沈黙が降りつつあった室内に静かな声音が響き渡る。
声の出どころは、生徒会室の奥の扉からだった。
「陸……」
美都羽副会長は、私からすっと手を退け、身体を離す。
ドアドンから解放された私は、声のほうへと視線を向けた。
「……!」
現れた少年の姿に、私は小さく目を瞬く。
彼は、この白蘭学園生徒会の会長、王郷 陸(オウサキリク)だ。
私は、彼のことを知っている。
……それに。いや、 今はどうでもいい話である。
私は頭を軽く左右に振って前を見据えた。
王郷会長は無造作な灰色の髪をくしゃくしゃと掻いていた。
制服のシャツと少し緩めたネクタイが、なんとなく寝起きっぽい。
「鈴蘭はどこに…………誰だ?」
彼は目を細めて周囲を見渡し、私の存在に気がつくと首をかしげる。
その灰色の瞳に、身体が強張る気がした。
「陸、鈴蘭の双子のいもーとだよ」
「……ああ」
冬さんは近くのソファに身体を沈めながら答える。
そして王郷会長は私をちらりと一瞥して、生徒会長席に腰を下ろした。
「鈴蘭は寝ているんだろう。このまま帰してやれ」
「彼女にお伝えしておかなくてもよろしいんですか?」
彼女とは、きっと私のことなんだろうけど。
私になにを伝えようっていうんだ。
それにさっきの鈴蘭を苦しめたらって言葉も気になるし。
「……言わなくても、俺たちが動けばいい話だ」
最低限の声音でつぶやく王郷会長は、その綺麗な髪を揺らし、透き通った灰色の瞳で私を見捉える。
動けばいいって、勝手に話しを進めないでほしい。
「鈴蘭は生徒会のものだ。だから、お前はこれまで通り好き勝手にやっていればいい」
「……」
は?????
あまりの発言に、口が開きそうになる。
なにその言い方、ものって言ったよこの人。
相変わらず敵意剥き出しの人も数人いるし。
そもそもなんで初対面の人からここまで熱のこもった敵意を浴びないといけないの?
私は学園で落ちこぼれと遠巻きにされて馬鹿にされるのは日常茶飯事だけど、目に見える敵意を向けられるようなことをした覚えばないんだよ。
あ、でも。態度が悪くてカンに障ったとかなら……だめだ、なんだか頭が痛くなってきた。
だけど言われっぱなしというのは、私の表の性格上あり得ない。
「あなた方がなにに対して目の敵にしているのかは知りませんが……鈴蘭を利用するようなことは、絶対に許しませんから」
それだけを告げ、私は今度こそ生徒会室を出ていく。
…………ああ、なんだろう。このどうしようもない感じ。
今すぐコタツにもふっと抱きついて心を落ち着かせたい!!



