「まったく、冬……もっと言い方があるでしょう?」
「なにが? 春が信用してない人に口を開かないのは本当のことじゃん。嫌いな奴にもだけど」
ふたりが言い合っている隣で、私は再び春さんを観察した。
「……?」
私の視線に気づいた春さんは、一度こちらに目を向けるものの、すぐにまた目線を宙にさ迷わせてしまった。
なんだろう。信用とか嫌いっていうより、これは無関心に見えるんですけど?
なにを考えているのか読めない表情、ぽやんとした目つき……これは、なんというか。
「めちゃくちゃ可愛い……」
「なにか言いましたか?」
「いえ、べつに」
六堂副会長の指摘を受け、私は無意識に口が開いていたことに気がついて内心焦った。
胸を撫で下ろし、もう一度春さんを見つめた私は、心の中で大きく雄叫びのような悲鳴をあげていた。
「…………」
──や、やっぱり可愛い! 本っ当にかっっわいい!
もはや冷静を装った私の心はプチフィーバー状態。
なぜかというと、小動物のようにきょとんとした表情の春さんが、私にとってはどストライクに可愛すぎて堪らなかったからだ。
変態と言われようが構わない。
可愛いに罪はないのだから。
内心開き直ってまじまじと熱い視線を送っていると、春さんは目を合わせてきた。
「……」
「…………?」
1、2、3……と時間が流れていくが、春さんの表情が崩れる気配は一向にない。
やっぱりおかしな奴だと思われているのかな?
まあそれでもいい、だって可愛いから。
「…………」
春さんはひとつ瞬きを落として、また目を逸らした。なにそれ凄く可愛い。
……はっ、いけない。いよいよなにかに目覚めてしまう前に早く鈴蘭を連れて帰ろう。
私は心の中で気持ちを引き締めた。
「鈴蘭がお世話になっているようですね。私は零条士つぼみと申します。あなた方と関わるつもりは一切ありません。では失礼します」
生意気でごめんなさい。
言い方最悪でごめんなさい。
でもこれが、私の作った偽りの性格なんです。
心の中で謝りながら、私は鈴蘭を起こさないようになんとか背負って、よろけながら部屋を出ようとした。
──ドン!!
しかし、それは叶わずに終わる。
開いていた扉の隙間が、勢い良く閉じてしまったのだ。
すぐに私は、後ろから伸びてきた誰かの手によって押し閉められたのだと察した。
これは、いわゆる壁ドンに近い体勢じゃないですか。
なんて呑気に自分の中で少女漫画で見たシチュエーションをもくもくと思い浮かべたが、すぐに抹消する。
だって、後ろから感じる視線はひどく冷たいものだったから。



