双子の妹はカエルのお姫様①



部屋の家具に気を取られていて気づかなかった。
まさかずっとられていただなんて。



「……っ!」


右頬につんつん、と触られた感触がして、私は思わず反対側に飛び退く。

目を見張りそちらを見ると、心底面白そうな表情をした人物が立っていて口から驚きの声が出そうになる。

びっくりしたああ! 至近距離に生徒会!



「あはは、そそる反応だねぇ〜。この子が噂のカエルちゃん?」


触れられた頬に手を添えて警戒すると、その人は飄々とした顔で笑みを浮かべた。

この人は確か、セクシーだの女好きのプレイボーイだと噂されているほうの副会長の……。

艶やかな藍色の髪と、少し垂れ目な目尻に、紫の瞳。


綺麗な人だけど……うん、シャツのボタンは開け過ぎかな。

セクシーだと騒がれている由縁はここからきているのか、あきらかにほかの生徒より、シャツがはだけていた。



「生徒会副会長の美都羽皐月っていうんだけど知ってるかな~? 俺はね、君のこと知ってるよ、カエルちゃん」



美都羽 皐月(ミトバサツキ)。

にこりと弧を描く口元を見ながら、ああ、そうだそんな名前だったと心の中でつぶやく。



「すみません、どうでも良いことはあまり覚えられなくて。教えていただきありがとうございます」


今さらだけど私の外側のキャラは、こんな感じだ。

人によって好き嫌いがはっきり分かれそうな性格だよね。というか皮肉屋で嫌味ったらしいので、嫌煙されて遠ざけられる。



そして案の定、初対面の私の無礼極まりない発言に、美都羽副会長は目を丸めた。


それにしても美都羽副会長って、口にするとまあまあ長い名前だなぁ。副会長だけでもいいだろうか。



「ふふ、言われてしまいましたねぇ、皐月」



そのとき、一瞬の間を置いて、上品な笑い声が耳に届いた。

近寄って来たのは、眼鏡を掛けた人物。
黒髪で、眼鏡のフレーム越しからは翡翠色の瞳がしっかりと確認できる。



「あなたのことは鈴蘭から伺っていました。私は同じく生徒会副会長の六堂昴と言います」



そうだ、副会長二人だった。それならやっぱり美都羽副会長と、六堂副会長と呼び分けをするべきか。


六堂 昴(ムトウスバル)。
成績が常に上位だということは知っていたけれど。

近くで見た印象としては、物腰の柔らかい優男で、緩やかな笑顔を含む落ち着いた雰囲気のある人だった。

美都羽副会長が綺麗系の顔立ちなら、こっちはなんというか美しい。雅な感じがする。


それにしても。


「……私のことを鈴蘭から聞いていた、ですか」


鈴蘭は私のどんなことを、この人たちに話したんだろう。