「……鈴木さん?」
庭へ出ようと玄関ホールに向かっていた途中、私は車の鍵を手に持った鈴木さんと鉢合わせした。
急いでいたようにも見えたが、彼は私を前にするとゆったりと微笑みを浮かべて礼を取る。
「これから鈴蘭お嬢様をお迎えに上がろうと」
「運台さんはどうしたんですか?」
運台さんとは、私と鈴蘭の送迎を任されている専属の運転手だ。
私は部活に入ってないため、帰りは鈴木さんが来てくれているけれど、鈴蘭を迎えに行く時間帯は運台さんの担当になっている。
「運台は風邪の傾向があると連絡を受けまして、その間はすべて私が送り迎えを担当することになりました」
「そうでしたか……」
運台さん、朝はそんな素振り見せなかったのに大丈夫なのかな。
きっと私や鈴蘭に風邪を移すわけにもいかず、鈴木さんに送迎を頼んだのだろう。
「つぼみお嬢様は、どちらに向かわれる途中で?」
「私はコタツのところに行こうと思いまして」
「コタツならひとりで遊び疲れて、手入れをしている木村さんの近くで寝転がっていますよ」
鈴木さんはそう言って、くすりと笑った。
遊ぼうかと思っていたけれど、寝ているなら止めておこうかな。
「あ……」
部屋に戻ろうかと考えていたとき、ちょうど学園に忘れ物をしたことに気がついた。
……最悪っ、手帳を忘れてた!
そういえばロッカーの中にしまいっぱなしだったんだ。
「あの、鈴木さん。すみませんが学園に忘れ物をしてしまったので、私も一緒に行ってもいいですか?」
「ええ、かしこまりました」
鈴木さんは顔をきょとんとさせたあと、すぐ笑顔に戻っていた。
「それでは、こちらで少々お待ちください」
玄関を出たあと、鈴木さんはガレージのほうへ歩いて行った。



