「エラ様の調査報告に参りました」
僕の予想通り、マックは僕の前まで来ると慣れた様子で報告を始める。
「本日は南部の平民の調査報告です。南部の平民全ての捜査が完了いたしました。こちらが銀髪に紅い目の19歳前後の女性の資料です」
「ご苦労」
今まで取り掛かっていた仕事を中断し、マックから資料を受け取る。
そしてその資料を僕は1枚1枚見始めた。
この女性の髪は確かに銀色だが、僕のエラの髪はもっと柔らかそうで、絹のようだった。
瞳もこんな色ではない。彼女の瞳はルビーのような輝きをいつも放っていた。
どれだけ資料をめくってもそこに彼女の顔はない。
そっくりさんレベルにだってなっていない。
全員全く彼女と違う。
「…どうでしたか?」
資料を全て見終わった僕を見て緊張した趣でマックが僕に問いかけた。
今日こそは「彼女こそエラだ」という言葉を聞きたいのだろう。
無理もない。マックは普通の仕事と並行してエラを探す仕事をもう5年も続けている。
僕とは違う意味で彼女を切実に見つけたいはずだ。



