「……ちょっとでも……ドキッとした俺が大バカだった。いらねぇのつけんな。これで詩姫から何かしてもらう権利俺一回ゲットな」
「え!?今のはノーカン!」
「無理。余計なのつけたから」
ふん、と貴公子に目を背けられ、私の意地っ張りスイッチが発動する。
「分かった!ちゃんと呼ぶからちょっと待て」
「……本当かよ」
どうせまた余計なのつけるんだろ、と貴公子は呟く。
いいさ、呼んでやる。名前を呼べばいいだけなんだから。難しいことはない。
「つ……つー……椿冴……よっし言えたどうだ──!?」
達成感とともに貴公子を見れば、
「……上出来だ」
満足げに、優しく微笑まれ、息を呑んでしまった。
「その調子で頼むぜ?この先、ずっと……な」
ずっと──
「こんな次期女将に……愛想つかさない?」
「バーカ、毎日好きが増してるっつの。お前こそ、俺に好かれすぎていやになったりすんなよ?」
「し、しないやいっ」
「……じゃ、ほい」
目の前にゆっくりと小指が立てられ、私はその指に自身の小指をひっかけた。
「ずっと俺たちらしく一緒にいる……約束、な──」
fin───◆◆◆



