らしくしよ、恋ってやつを


「でも、なんか……」
「なんか?」
「恥ずかしいっていうか……貴公子の方がしっくりくるっていうか」

最初から貴公子って呼んでたのが定着しすぎて、今でもお母さんと鼓さんの前で名前よりも貴公子って言ってしまう時が多々あるし。

「だったらなにか?お前は永遠と俺を貴公子呼びする気かよ」
「永遠って、大袈裟な」

スケールが大きくなりすぎでは。

「……じゃあこうしようぜ?俺のことを貴公子って呼ぶ度に、詩姫から──」
「断る」
「……まだ何も言ってねぇだろ」
「んなもん、ある程度しぼれるに決まってんでしょうが」

ハグ、キス……頭に浮かんでくるのはそのくらいなんだから。

「なら話は早いじゃんかよ。呼ぶ練習だと思ってやれば案外いけるかもだろ?ご褒美もやる」
「あのねぇ、ご褒美つけりゃやる気出るなんて子供じゃあるまいし……」
「俺だけ詩姫って呼んでるんだぜ?今のうちから貴公子呼び直さないと、後々面倒なんだよ……」

後々?
この先、公の場でも貴公子と呼ばれるのは恥ずかしいから……とか?
確かに地味に嫌かも。私の次期女将も嫌だし。

「……あのなぁ、一つ言うけど、多分今お前が思ってたこと違うからな?」
「エスパーか」
「お前に関してはそうかもな。……んで、面倒って意味は将来を見据えてる上で、ってことだ。分かるか?鈍感詩姫」

また鈍感って。
でもさすがにそこまで言われたら、理解できる。

「……わ、分かったってば。……椿、冴……くんちゃん」