「って、おいこらちょっと、女子の部屋に勝手に入るとは……!」
すでに私の部屋を見つけ中にいた貴公子は、あるものを手にしていた。
それは、私の子供の頃の写真。
お母さんが着ていた着物を身に付け、遊び半分に旅館の手伝いをしていた頃の。
楽しそうにニコニコしている私の写真を。
普段から机に伏せてあるのに、見られてしまった。
「……なに、人の写真まじまじと見て。今と違うとかそういうこと?」
この頃はこんなつっけんどん要素なんか、なかったのにな。
旅館にいて、楽しそうに笑うこともほとんどない。
「いや、そうじゃねぇよ。大体子供の頃は皆可愛いもんだろ。だからお前にも可愛い時期あったんだなーって」
「……過去形じゃないか。別にいいけどさ。ほら、満足したでしょ?リビング行くよ」
「だな。喉かわいたわ」
下におりて、ソファにくつろぐ貴公子にお茶を出し、雨がやむまでそう長くはなかったけど、共通の話題と言えば学校だと……授業中の話や面白かったことをお互いに話し合った。



