「……貴公子もでしょ?立派な華道家になって、教室も継ぐって」
形はどうあれ、何かを継ぐって意味合いではかわりないはずだ。
「それは……どうだかな」
「違うの?」
問えば、貴公子はうつむきがちに答えた。
「俺も同じようなもんだよ。やりたいわけじゃねぇけど、必然的にやらされて流されて、今もなんとなくやってるだけ。口の悪さ云々の前に、継ぐとか……俺も、向いてねぇよ」
私もそう。流されて、手伝いをして、今もやってるだけ……
「鼓の名だけで、ばあちゃんの孫ってだけで……ろくに俺の花なんか見たことないやつが、華道界の貴公子とか勝手に呼びやがっただけだし」
何故か、貴公子は弱々しい笑みを浮かべた。いつもけらけらと私を小馬鹿にするような覇気は一切感じられない、どこか悲しそうなそんな笑い方。
「……お前さ、子供ん時から旅館でばあちゃんの花を見てきただろ?それ、どう思ってた?」
「どうって……」
私の華道の成績を知ってて聞いてる?って思ったのに、貴公子の顔は切なげで。
なんで、急にそんな顔するの?
なんだか、こっちまで調子狂いそうになる。



