らしくしよ、恋ってやつを


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たまにおとずれるんだよなぁ、私のイヤイヤ期みたいなやつ。
家に帰りたくないっていう時が。
しかも三年生になって、その頻度が増えてきている気がしてならない。


「……はあ」

時間をつぶそうと、眼鏡優等生くんが絡まれていた高架下の近くにある階段に座って何度もため息をつく。
今日は何も言われてないから、遅く帰ったって怒られはしないし、夕飯まではここに居ようかな。退屈だけど。


「……皆森?」
「ん?……あ」

不意に呼ばれ、振り返れば制服なのに手ぶらの貴公子がいた。家から来たんだろうか。

「こんなとこで何してんだよ」
「別に、ただの暇潰し。貴公子は?」
「……んまぁ、俺も同じようなもん。よっこいせ」
「ふーん」

隣に座った貴公子を横目に、遠くを見つめた。
隣にいる貴公子も、特に何を話すわけでなく、どこかを見つめている。
二人して会話をしようとしない……なのに並んで座ってる。なんなんだろうな、この空気。
でも、不思議と嫌な気はしない。


「あー……一つ、聞いてもいいか?」

沈黙を破ったのは貴公子だった。

「駄目って言ったらどうするの?」
「まぁ普通に聞くけど」
「だと思った。拒否権ないなら意味ないだろうが。なにさ」

この口調で話したとき、前はやらかした気持ちになったけど、今は制服姿でふてぶてしい返し方をしても、貴公子相手だから問題はない。