「杏奈、眼鏡したら?」
「いやいや!視力は全然いいから!」
それなら尚更理解に苦しむ。
「だってさだってさ、二年生の中じゃわりと硬派で通ってるみたいなんだよ?鼓くん!」
「硬派?」
「そう!あまり女子とは話さないって。なのに、鼓くんから詩姫のとこに来て、"どした?"ってさ!他の女子からしたら、珍しくて羨ましい光景だったんじゃないかな!」
杏奈ははしゃぎながら、貴公子の真似をして見せた。
そもそも硬派だとか、女子とは話さないとかって、どこからそういう話を聞いてくるのかが気になる。
「……そんなの旅館と華道家での繋がりがあるってだけでしょ。考えたらすぐ分かることだと思うけど?」
「えーそれは分かるけどさー」
色恋沙汰にしようとするのは勘弁。
私と貴公子は華道教室でも旅館でも、表向きうまくやってるように見せてるだけなんだから。



