「これ、なんかの資料だそうでーす。詩姫、次いこ」
「あ、うん」
三クラス目まで、貴公子の姿は見当たらず。もしや校内でも会うことになるのか、なんて考えたけど、今は昼休み。教室にいないかもしれないんだから、構える必要ないじゃない。
「詩姫の配ったら終わりだね」
「うん」
三年がわざわざ届けに来たんだから、堂々と四組の教室中へ入っていけば、
「あ」
「……っう!」
教卓の近くで談笑している貴公子がいて、つい変な声が出てしまった。
貴公子は貴公子で目を丸くする。
すると、『あれ、確か旅館の人じゃない?』と小声で話す声が聞こえてきた。
なんとなく早く立ち去りたくて、近くにいた男子生徒に資料のことを話そうとしたのだけど……



