らしくしよ、恋ってやつを



──しばらく貴公子の観察を続け、再び事務室に戻り待機した後──貴公子が生けた花を母は絶賛していた。
鼓さんは、まあまあ、みたいな表情だったけど。


そして帰り、再び玄関前にて見送りにでると、


「あ、若女将」

急に貴公子が口を開いた。
だがなんの反応もしない私を、お母さんが肘で小突いてくる。


「ちょっと……詩姫。あなたのことよ」


隣にいる母に再度肘をつつかれ、はっとする。

「え、あ、はい。なんでしょう」
「よろしければ、連絡先を教えていただいても?」
「えっ」


イヤですけど?って言ってもいいだろうか。
しかもなぜ貴公子はそんな笑顔なのかわからない。さっき会ったばかりだと言うのに。


「あらそうね、同じ学校なんだし、これから何かとお話する機会も増えるだろうから」
「そうしなさいな、詩姫」


うそでしょ?
同じ学校?同級生の中で見かけたことはないから、年上?それとも年下?
学ランなんて、どれも同じように見えるから分からなかった。それに着崩してたのもあって余計に。

でも大人二人に微笑まれ、空気的にも断るわけにいかず、私は笑顔で帯にひそませていた携帯を取り出した。