らしくしよ、恋ってやつを


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『皆森旅館』──母が女将で、代々継いできた古きよき木造建ての旅館だ。


「ただいま」

旅館を抜けて、裏手にある家へ行こうとしたら、横からお母さんがやって来た。

「遅いわよ、詩姫。今日は早く帰って来てって言ってたのに。着替えておいで」

「……はーい」


そういや今日は確か、お偉いさんとその弟子?が来るんだっけ?
昨日言われたけど話聞いてなかったから忘れてしまった。


事務室に行き、慣れた手付きで制服から着物へと早着替え。髪を束ね、全身チェック。
変なところはないのを確認して、私はお母さんが待つ玄関前へ向かった。

するとすでにその白髪のお偉いさんが来ていて、声が聞こえてくる。