「動くな。ちょっと大人しくしてろ」
なんで初対面で、手繋いでなきゃいけないんだろう。
ブスくれた顔で仕方なく大人しくしてると、男の子は制服のポケットから絆創膏を取り出した。
しかも……ピンクのうさぎ柄の絆創膏を。
「今、尻餅ついたそん時だろ。指、少し切れてた」
「え……あ、ほんとだ。どうもありがとう……」
痛くなかったから分からなかった。
「ん」
握られていた手の方の指に貼られたうさぎ柄の絆創膏。
──ぎ、ギャップありすぎるっ……。
ダメだ。少し口元がにやけてしまう。
「ず、ずいぶんとっ可愛い絆創膏をお持ちね」
「……笑ってんじゃんねぇよ。言っとくが俺の趣味じゃねぇからな。勘違いすんなよ」
別に気にしなくていいのに。
私だって言いふらしたりしないから。
「つか、あんなやつに自分から絡まれに行くとかバカかよ」
「たまたま見かけちゃって見ざる出来ず……でも鞄いいとこにあっただろう……が。でしょう?」
危ない。つい口調が乱暴になりかけた。
明らかにもう聞かなかったことにって言うのは無理だけど。
「あ、えっと……用事あるんで。絆創膏本当にありがとう、それじゃあ……」
もっと素の自分をさらけ出す前に早くこの場とこの男の子から離れたくて、軽く会釈をし足早に帰路に着いた──



