王子様のようなノーブルで涼しげなつり目と形の良い細い鼻を持った青年が、見た目からは想像もつかない子どもっぽさで姐さんに聞く。水色と銀色のメッシュの入ったふんわりした黒髪が耳を隠すほど長い。こちらも身長が高い。162センチある私が見上げる格好になる。担当カラーは青。

彼らは全員20歳以上で、今いちばん勢いのあるアイドルグループだ。海外へもよく行っている。私にとっては事務所の先輩。本当はこんなに気軽に話せる相手ではないはずなのだが、彼らはいつもフラットだった。

「むぅちゃん、さっき髪ふわふわにしておろしたから、今度は上げよっか」
ヘアメイクさんがニコニコしながら私を鏡の前に座らせてくれる。となりのオレンジは白いワイヤレスイヤホンを耳に突っ込み、その隣の緑姐さんは自分でメイクをし、青ちゃんはヘアを整えてもらっている間、ずっと英語の歌を口ずさんでいる。

「大人っぽい曲だから、メイクもちょっと大人っぽくしようね」
「ちいでなくて良かったんじゃね?」
隣から嫌味が聞こえてきたが聞かなかったことにしてやる。ステージで勝負しろ。あんたをつぶして私が主役になってやる。

ロマンティックなステージだった。
恋の苦しみ、別れの切なさをオレンジと私が演じるように歌った。古い映画の主題歌。
幼なじみのさわやかさ、長くいっしょにいた慣れの空気、初恋。そして別れ。
歌い終わって、ふり向いてオレンジの顔を見、いっしょにお辞儀をする。
お世辞ではない万雷の拍手で迎えられた。

- オレむぅ推せる。
- 世界最強ビジュのオレむぅ。
- オレジーガチ恋勢なのになぜオレむぅに見入ってしまうのか。