「おら、早よ行くぞ」
バイクを辞めて、同時に高校を辞めた。元々バイクのスポーツ推薦で入学した学校だったので。
次の高校にと選んだのは旭が通う学校。
引退を決めてから暫く、浮かない表情を貼り付けたままだった私へ、旭からの提案で編入を決めた。
「はあい」
兎にも角にも、バイクという最大の盾を失った私が今から入れる高校も限られていたので、二つ返事でその提案を受け入れ今に至り
編入から三ヶ月ほどが経つが、問題なく日々は過ぎている。
問題なく。
…でも、まあ。
なんとなく知っていたことだけれど。
想像以上の荒れ様だった──なんてことを、旭にだけは言わないでおこうと決めている。
それは、ひどく不器用で暖かい
彼の良心に応えたいから。
出来るだけ彼に笑っていて欲しいから。
出来るだけ、一緒に笑っていたいから。
「──友達できた?」
「うん」
「へえ、俺の知ってるやつ?」
「…知ってるんじゃない?」
「でかい?」
「…なにが」
「…胸?」
「…キモ」
電車の中。
眉を顰める私に、旭が可笑しそうに喉を鳴らした。
