頬が火照るが、違いなく不本意だ。 「…真っ赤じゃん」 もしかすると私は、とんでもない人間に目をつけられてしまったのかもしれない。 「…あの、龍、さん」 「“龍(ロン)”」 “ロン”で良い。 「…ロンさん?」 「うん」 ──俺の本名。 優しい声が降りかかる。 ゆっくりと離れて行く熱。 ただ一つ。 彼の瞳だけが、私を捕らえて離そうとしない。 「──小夜!」 「…キャンキャンうるさい番犬だこと」 「番犬て」 「あはは、内緒ね」 「…分かりました」 「またね、小夜ちゃん」 「はい」