Roadside moon











「“サヨちゃん”、ね」











このうえなく白に近い金の髪。地毛だろうか。





163cmある私を遥か上から見下ろすその目は紺碧がかった深い緑で





はっきりとした目鼻立ちは、思わずこちらに欧米での出生を推し測らせる。





薄い唇はほんのりと色付き





長いまつ毛が、瞼に薄らと影を落とす。





「…」





とても





人間味のない顔だと思った。





逆に言えばきっと





それほど美しい。





私を真っ直ぐに見つめる瞳が醸し出す、濃密なフェロモン。





(なにこの色気…)





“妖艶”。





女性とも男性ともとれる、中性的な美。





きっとこの目が捕らえれば
この世の何も彼から逃げられない。





そして私は今





その目に、見つめられていると言うのだ。









「ちょっと二人で話したいな」





「うっ、ふ、ふふたり?」





「ふが多いね」





紅潮していた肌からすっと熱が引いていく。





これはヤバい。直感だった。





何がヤバいのか分からないけれど。多分ヤバい。





旭やお母さん。それから川本さん。





ここには居ない彼等彼女等の顔を丁寧に思い出し、一言ずつお礼を言った。





(私、おそらく今日が命日です)と。





冷えた掌が私の腕を引く。





と、存外優しいその手つきに





私はなんとも不思議な心地に包まれてしまった。