「…」
情けなく上擦った私の謝罪に黙り込んでしまうスズちゃん。
空気が止まる。
「…ま、まあ、そんな深刻に考えなくても…」
この状況をなんとかしようと亜綺くんが口を開くが、好転せず。
しばらくしてそこに刃を入れたのは
それまでずっと、静観を決め込んでいた綺世だった。
ぐっと私を覗き込み、ふぅんと一言呟いて
シルクのソファに腰掛ける。
「…“自己満足”」
「、」
緩やかな口調は
それでいて、深く核心をつくもの。
「頼まれてもないのに勝手に割り込んで。関係者でもなんでもないサヨちんに助けられたシャオちゃんが、どんな気持ちになるかも想像つかなかったんだ」
「おい」
「そりゃ罪悪感くらい抱くでしょ〜泣きたいのシャオちゃんの方だよ」
嘲笑。
亜綺くんが静止をかけるが
しかし、綺世とて止まらない。
「これでもし、サヨちんが失敗して怪我してたら」
「…」
「話はもっともっっと大きくなったね」
「…」
「全部サヨちんのまいた種なのに、今更気付いて怖くなっちゃったんだね」
「綺世、」
「サヨちん」
「言い過ぎだ」
「それさ」
──偽善者、って言うんだよ。
「──っおい」
息付く暇もなかった。
冷えきった言葉に顔を上げれば
亜綺くんの左腕が、綺世の胸ぐらに伸びていた。
「っ、」
「っ亜綺」
何か言わなくてはいけないのは私で。
なのに、やはり声が出ず。
だからというと言い訳がましいだろうけれど。
「──コラ」
いつの間に、同じ空間に見知らぬ美青年がいたことにも
彼がいつ、二人の間に入っていったかということにも
しばらくの間気が付けずにいた。
