言うと、何かを考え込むように黙り込んだ亜綺くんが
しばらくして、懐から取り出した煙草に火を付け始める。
二つほど煙を吐いたあと、私の方に顔を向けいい?と尋ねる彼に、少し笑っていいよと答えた。
父の生前
煙草に消えて行く膨大な金銭に対し、母が日頃苦言を呈していたことを、なんとなく思い出した。
「…亜綺くん」
「ん?」
「いくつ?」
「歳?」
「うん」
「19」
「えっ、」
「お前は?」
「17…」
「下かよ」
「…………亜綺さん」
「もういいよ。亜綺くんで」
淡く鼻をつく懐かしい父の匂いにつられて。
なんとなく成人には見えぬような彼の横顔に尋ねてみたのだけれど
まさか本当に未成年だとは思わず。
「…ごめんなさい」
小さく呟けば、亜綺くんはマルボロを地面に擦り付けながら言う。
「さっきからなに謝ってんの?」
「…えっと、いや…」
「うん」
「歳上だったのに、くんとか付けて…」
「ああ、」
「あとは、」
「うん」
「…迷惑を、かけちゃって」
ごめんなさい。
念押しで頭を下げる。
すると彼はフッと笑いながら二本目の煙草に火を付けて
その煙を、あろうことか私の頭に浴びせた。
「──はっ、えなに!なにすみません!」
「あっははは」
