──ベィン、ベィン
さすが族車だ。可笑しな音がする。
おまけに扱いにくい。
だけど。
生憎、それが妙に私を掻き立てるので仕方がない。
──キキイィィ
シュー、と息を吐くような音のあと、満を持して眼前を見据える。
「…あ?」
低い。地を割るような、低い声。
最初に声を出したのは悪党のうちの一人だった。
七対一。
伸びているヴィラン、八体。
その強さは私の目からも瞭然たる。
『笠原 亜綺』
特攻服の袖にある文字で確認する。
やっぱり。この人は綺世のお兄さん。
私が、助けるに値する人。
「──おい、」
「っ乗って」
「あ?おいこらアマ、誰の単車か分かって乗ってんのか」
「お兄さん、乗って」
「…は?」
