「え、っと…」
「…ちなみにそれ、アイツらのなんだけど」
“アイツら”。
“ら”ってことは多分、ヴィラン側の男たち。
ああなった成り行きは知る由もないけれど、大勢で二人をリンチは私の中で完全にヴィラン判定だ。
「…よかった」
「よかったって何が」
「あえっと、あいつらのなら、壊しても構わないかもな、って…」
「…ええ?」
「…あ、あのっ、私に考えがあります」
これが悪党の代物だというのなら、どうなろうと私の勝手。
完全に法に触れそうな考えが脳を支配する。
臆病なくせに意地っ張りで強欲な、実に私らしい考え。
「…それ多分違うけど」
「…」
「まあ、アイツらムカつくし」
苦笑いを零すスズちゃんに、今からやろうとしていることを簡潔に説明した。
案の定、彼女は無理だと笑った。
「あなたが?出来るの?」
「それは、」
「やめな。死んじゃうよ」
──助けてくれようとしてる気持ちはありがたいんだけど。
「…出来ます、信じて」
「っ、しつこいよ」
「お願い。信じてください」
「いい加減にして」
スズちゃんが私に向ける視線の色が変わった。
怒気を孕む目だ。
『馬鹿にしているのか』と。
「…」
違う。
勝算がある。
それを、信じてもらうには。
──方法は一つだけ。
足手纏いになるかもとか
逃げるのが最適だとか
そんなのは全部言い訳で。
ここで行かなきゃ、きっと私は私じゃなくなる。
「…わかりました。その目でたしかめて」
「は、ちょ!ちょっと何エンジンかけてんの!」
「助太刀します」
「ねえ!馬鹿言わないで!」
