「──っナメやがって」
「逃がすな!」
そうなるよね、という展開だ。
私と彼等との距離は体感30メートルほど。
当然身構えもする。
(さあ来るなら来い!もういざとなったら警察呼んでやる!)
気張ると同時、器用に最悪も考慮。
ああ、泣きそう。
旭、私今日が命日みたいです…
「…どこに目つけてんだ」
がしかし。
私の予想は見事に外れることになる。
どこか楽しげに響いたその声は、先程の男たちのどれでもなく。
スズちゃんを追おうとした彼等にまさか、アキの拳が伸びていた。
「っ、動けんのかよクソッタレ」
「まあ。一応」
男たちも臨戦態勢に入る。
それを不安そうに見つめるスズちゃんは、10秒ほどのタイムラグの後
ようやく私の存在に気がついたようだった。
「えっ、え!ビビった誰!!」
「えっ、えとあ…小夜でふ」
「え、スズです」
「あ、うん、よろしく…」
「えっ、と…」
「…」
途轍もなく気まずい沈黙。
スズちゃんが固まった。
私も一緒に固まった。
その理由は
もしかしなくとも
「ちょっと」
「…はい」
「ちょっ、と…」
「……はい…」
「それ、誰のか分かって乗ってる……?」
「…あ、あははは」
──きっと私が呆けた顔で、バイクに跨っているからだろう。
