「、アキ!」
やめてよと、耳をつんざくほどの大きな声が響き
男たちの視線が、彼女に移る。
「…気強え女の泣き顔っていいよな。すげえ勃つ」
「っ、」
舌を舐めずりながら彼女の肩へ手をかける
その手を、やはり“アキ”が振り払う。
「アキ、」
「──スズ」
「アキ…?」
「走れるか」
「、アキでも」
「…いいから行け」
「待って置いてけない、」
「早く」
「あ?」
──逃げろ?
「勝手なこと言ってんじゃねえよ」
「、あ」
慌てて口を塞ぐ。不意に零れた声に気づかれれば元も子もない。
「…あ?」
(バレた…?)
恐る恐る路地を覗き込めば
バチリと、目が合う。
それは
──“アキ”の目。
「早く、行け」
「……っ、でも」
「すぐ行く」
「…」
たしかに目が合った気がしたのだけれど、アキは私を一瞥したかと思うと
再び視線を戻し、“スズ”と呼ばれた彼女に声をかける。
ああよかったと、人知れず安堵する私の方へ
スズちゃんが走り出した。
