本当は心のどこかで分かっているからなのか。
安易に警察には頼れないこと。
だからといって今逃げることが最善ともいえないこと。
…いや、殺されはしないだろうけど。きっと。
私がその小さな頭を駆使して必死に最適解を探しあぐねていた
その時。
「…」
とあるものが目に付いた。
夜の闇の中を差し障りなく佇むそれに、私の視線は一瞬にして釘付けになる。
使える、これ。
「…、よし」
あとは、二人のどちらかが逃げ出せば最高なんだけど。
さすがの私も二人まとめては“運べない”。
そこに希望の光が一筋。
“アキ”が立ち上がり、男の手を払う。
「…あ?」
「、アキっ」
「めんどくせえな」
よろよろと立ち上がった“アキ”に、再び容赦のない暴力が降りかかる。
何故かやり返さない“アキ”の身体にのみ、傷が増えていく。
直視できずに視線を逸らした。
(…なんでやり返さないの、あの人)
