「おういアキちゃん、もう終わり?」
「、っあんたら…」
──やっぱり。
「…特攻服」
あの羽織は『朧』のものだ。
さらに言えば、アキと呼ばれたその男。
理解する。
この人は朧の“アキ”。
『笠原 アキ』
つい先程知った名前だ。
結さんのいとこで、綺世のお兄さん。
まだ断定していいわけじゃないけれど。
おそらく私の推測は外れていないだろうと悟る。
心做しか、俯いた横顔が綺世に似ている。
「…お前が俺らと来るっつうなら、ここでアキちゃん見逃したっていいけど」
「…、っ」
「首横に振りゃ、どうなるかぐらい分かるよな」
──なあ、お嬢ちゃん
いや、いやいやでもだからと言って。
綺世のお兄さんだからと言って、どうにかなるものじゃない。
私が非力であることに変わりはない。
男の手が女の子の方へ伸びて行く。
それでも彼女は男から目を逸らそうとしない。
ああもう。嫌な予感しかしないから。
逃げよう、小夜。
逃げようよ。
「…もう、」
ああもう、なんで。
──なんで、動けないの。
