──ゴンっ
真っ暗な夜道。
視界が霞んで何も見えないが
その闇を這うように響く鈍い音は、人間の肉体が激しくぶつかり合う音に他ならない。
「おーいへばってんじゃねぇよーさっきまでの威勢どこやったんだよ」
「名前もナリも、力までメスだな」
声からして人数は五、六人だろうか。
対して。
口調なり声以外の音なり
なんとなく、予想はできたのだけれど。
相手は圧倒的少数。
「…」
きっとこれが俗にいう、“リンチ”。
ブロック塀の陰からそっと顔を出す。
街灯の薄明かりに目が慣れてくるとその分状況が掴みやすくなる。
私のほうから顔が見えるのは二人だけ。
男性が一人。女の子を守るようにして立っている。
そしてその二人を取り囲む
「いち、に、さん、し、ご、ろく…」
確認できるだけでも、ざっと十五人。
想像の倍を優に超える展開に唖然とする。
こんなのはどう見ても
(…一方的な暴力)
