──彼等がいきなり動きを止めたのも。
集団に訳の分からぬ道が一筋、出来たのも。
この虎の為であると言うのならば、異論はない。
──キキキィィ
「なに、あれ」
集団を搔き分けるようにして飛び出してきたその一台はまるで
この世界に降り立った堕天使。
私も一度は憧れた漆黒のフォルム。
まさか。
まさか、こんなところで貴方に出会えるとは。
「…、」
感激。
そんなことを呑気に思う。
呑気だが本気の。
本気の吃驚と、本気の興奮であった。
しかしその“憧憬”は、私なんかのちょっとやそっとの驚きでは飽き足らず。
もう一度低く呻った鉄塊。
彼は光速の如く脚を還らし、ボディを前傾さす。
