Roadside moon











「えなにこれなんで…?」





「い、いや分かんない」





状況を掴めていないのは私だけではないようで
すぐ下で、困惑しているらしい女性の声が届く。





がしかし。程なくして、私や彼女らが少数派の人間であったことを知った。





それも。





ごく僅かな。










辺りが気味悪いほどの静寂に包まれていたのである。





異様な光景。





真下の女性たちもその空気を感じ取ったのか、端で委縮したように固まっているのがわかった。





「…」





店には相変わらず小気味よいスローテンポの曲がかかったまま。





不自然なほど自然な





さきほどと、なんら変わりない風景。









あまりに普遍的なその景色を。





着と蝕む昏い光に





約3秒。気が付かなかった。