Roadside moon











そんな私に気がついてか
結さんが煙草を弄るその手を止める。





今度こそ私の方に視線を合わせ





私がそれを逸らせないことを、きっと知っていて









「──だからその“絶対”を、崩せる何かがあれば」





嬉々とした表情で。





「壊せる、誰かが居れば」





多分





私がどんな顔をするのかでさえ、分かっていて。









「、」





「──君なら、それが出来るんじゃないかって」





「っやめて、」





「君の走りで」





「やめてください」








──この街の風を、ぶった斬って欲しいんだ。









「っ、」











言葉を失った。





あまりに華やかなその表情に。





それに付随する、あまりに不釣り合いな言葉の響きに。





「…出来るって言うより」





「…」





「君しかいないよ。多分」





「…そんな」





「ずっと思ってた」





「…」





「君の走りを、初めて見た時からずっと」