未だ状況を上手く飲み込めずにいる私。
理解の追い付かぬ頭が、それでもなぜか
もう少し、もう少しと欲を出す。
そんな私に、なにを思ってか少し待っていてくれと告げ席を立った結さんが
『初代総隊長』
と書かれた特攻服とともに再び席に戻ってきたのは、それから3分ほど後のこと。
その背に大きく縫い付けられた『朧月夜』の文字は限りなく純白に近い金色で
自分でも意識をしないうちに、呼吸を止めていた。
「ほんとは下に渡す予定だったんだけどね。色々あってまだ俺の手元に残してるんだよね」
軽い語気でそう話す結さん。
やっとのことで現状把握に追いついた私の頭が告げていた。
これ以上先に進んではいけない、と。たしかに。
「どう?驚いた?」
「…なんか色々通り越しそうですが」
目の前にいるこの人からは想像もつかない代物だと思った。失礼だけれど、あまりに解釈が違っていて。
「似合わないでしょ」
「へ、」
「よく言われる」
言いながら苦笑する彼に返す言葉が見つからない。
ただ少し。
(…結局この人も、カタギじゃない)
そう思って少し
悲しくなった。
