憧れの景色。
つまりこれは、なににも変え難い感動の感情。
の、はずが。
「──ぶふっ、」
思わず吹き出した。
先導の集団。
そのチーム名であろう旗を見て。
「…“カマクラドノ”?合ってるのかな」
『火魔紅羅殿』
深い紫色の旗に映える赤。
同じ色の羽織───特攻服を身に纏う。
旗も特攻服も、かっこいい。
かっこいいのに。
「気になるでしょ、あれ」
窓の外を凝視していた私に、苦笑しながらコーヒーを差し出す結さん。
はい、と苦笑を返す私に
彼は更にダサいと思う?と付け足した。
ダサいかダサくないかと言われれば、たしかにダサいかもしれない。
でも。
「チーム創ったのが鎌倉出身の奴だったんだよ。周りにも変えろって言われるけど頑なに変えないんだよね」
「…なるほど」
「そんなもんだよ。ヤンキーなんて、馬鹿ばっか」
「そう…」
でも。
「…幻滅した?」
でもね。
「しないです」
私には眩しい。
彼らが、眩しい。
「…綺世の言った通りだ」
「え?」
「変わった子」
「…あ、それ」
「綺世にも言われたでしょ」
「言われました。さっき」
「うん。俺もそう思う」
「…やっぱり、変わってるんでしょうか」
「そのままでいてね。」
アイツらも喜ぶだろうから。
結さんが微笑む。
コーヒーを啜った。
なんか。
新鮮だな。
「あれ、苦すぎた?」
「あ、いや」
「ごめんねなんか小夜ちゃんブラック飲めそうな顔してたから」
「いや、なんですかその顔」
「あはは。砂糖持ってくるよ、今」
「ううん。このままで」
「え?いいの」
「この景色にはブラックが似合います」
窓の外を眺めながら呟いた。
結さんは浮かせかけた腰を落として。
「走りたくなるでしょう」
そう、笑った。
