Roadside moon












しまった。大きな声を出してしまった。









振り向いた彼が、妖しく笑っている。





「、う、嬉しかったのもほんとです!半分!」





「…ごめんね、」





「いや、」





「俺まで気遣わせちゃって」





血は争えないか。





諦念を滲ませ笑う結さんに、胸の軋む音がする。





なにか酷い勘違いをさせてしまっているような。





そのことがなぜかすごく苦しくて
いっそのことこの人に、全部をぶちまけてしまいたいと思った。









全部。





全部、言えたら。





私。少しは楽になれるんだろうか。










「──、」





『私、』





喉元まで出かかった言葉が掻き消される。
結さんの声だった。





なにかを確信したような





それでいて、どこかこの状況を楽しんでいるような。












「ひとつ聞いてもいいかな。小夜ちゃん」





「…はい」





「“皆瀬”」





「…え?」





「“皆瀬小夜”」





「…はい、」





「サインくれない?店に飾るよ」





「……へ」





光らせた眼で彼が続けた。





父が好きでね。バイクレース。





「ファンだったんだよ。君の」





「…え」





『バイクレース』
『ファン』
『皆瀬 小夜』





鈍く回る頭が、不器用に繋ぐ。