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窓際の席に着く。
間もなくお冷と手拭きの布を運んできたのは、店員らしき大人びた男性。
彼が綺世の親戚だろうか。少し彼女の面影があった。
私の顔を見るなり、爽やかな笑顔を見せる。
「──綺世から聞いてるよ。お友達かな?」
「あっ、はい。お邪魔してます」
唐突に正体を突き止められ、私も慌てて挨拶を返す。
「皆瀬小夜です。綺世さんにはいつもお世話になって」
「硬いね。サヨちんでいいかな」
「…」
思わず目が点になる。
親類も似るんだな。色々と。
そんなことを思っていれば、彼は冗談だと笑った。
「“小夜ちゃん”で」
「あ、はいなんでも、お好きな感じで」
「最近転校してきたんだってね」
「はい、三ヶ月くらい前に」
ふにゃりと笑う。
その柔らかい笑顔こそ綺世によく似ている。
「…よいしょっと」
そしてその彼は唐突に
持っていたトレーをテーブルに置いて、空いていた私の向かいの席に腰を下ろした。
「話し相手になってよ、小夜ちゃん」
「え?」
「まだ始まらないみたいだしね」
なにがですか、と訊ねる私に
『暴走』と
クスッと笑って答えた彼の名前を
──笠原 結と言った。
