[──サヨちん?聞いてる?]
「あ、うん。聞いてる聞いてる」
[ほんとかあ?復唱せよ]
心底可笑しそうな声音でそう命ずる綺世に、耳の中に溜めておいた言葉を特に何も考えずに暗唱した。
「『服は持参・駅西口今から・メイク道具レンタル可』」
[うお、完璧]
「でしょう」
自慢げにそう呟いた私に、あははと笑いながら『駅の場所わかる?』と聞いてきたので
私もそれに、分かるよと一つ返事で応答する。
じゃあ駅でね、と存外にあっさりと途切れた通話。
「…うん」
私の胸中は
なんとも複雑に絡み合ったままなのだけれど。
