彼女の手を引きながら、ぼんやり考える。
気づいてるのかな。この子。
私には耐え難いもの。
教室のどこからともなく私たちへ突き立てられる
畏怖の視線に。
こちらからは、普段となんら変わらないようにも見える綺世の表情。
でも、なんとなく。
分からないけど、分かるよ。
「…綺世」
貴方との関係はまだまだ希薄だけれど。
「どしたサヨちん」
久しぶりの感覚だった。
バイク以外何にも興味を向けなかった──というよりは向けられなかった、というほうが正しいのだけれど。
だからこそここに来て出会ったはじめての存在に
私は柄にもなく感動したのだ。
「私、綺世と仲良くなりたい」
柄にもなく。
彼女を知りたいと思った。
綺世が笑う。
多分、私の声が震えていたから。
「なーに言ってんの」
カラカラと喉を鳴らす彼女が
私にはまだ少し眩しいけれど。
だから。
「綺世を教えて」
「…上等」
そう言ってどこか妖しく微笑んだ綺世に
──夜、付き合うよ
私も、なんの脈絡もなくそう言った。
