Roadside moon











止まらない拍動が告げていた。





走りたいと





彼に、着いていきたいのだと。





素直になろうと思ったのは
この街のトップが私を欲してくれていることが、純粋に嬉しかったから。





言っていることは滅茶苦茶だけれど、言葉はやけにストンと胸に落ちてきた。





(…走りたい。朧で)





今この瞬間、他の何も要らないとさえ思える。





だから頷いた。





ロンさんの顔にみるみる大きな花が咲いて





私は、今世紀最大の激しさで抱き締められた。









「…緊張した」





「…緊張、」





「なんとなく、サヨちゃん断りそうだったし」





「どうして」





「…いや?うん、ほんとになんとなく」







どこか含みのある言い方だった。





あからさまにはぐらかされた答えに、私はいくつかの疑問点を発見した。





「……ロンさん、」





「ん?」





「どこまで…知ってるんですか」





「どこまで、とは」





「なん、ていうか…私の経歴っていうか、」





そう。





私は、自分の口からは何も伝えていない。





しかしその口ぶりからするに、大半のことを知っているのだろうと予想はつく。





だとすれば、亜綺くんがロンさんに伝えたことに違いは無いのだけれど。





(…まあ別に、口止めしたわけじゃないけど)





意外と口軽い。亜綺くん。










朧で走らせてもらうのだとすれば、彼とていずれ嫌でも知るだろう。それはごく自然なこと。





けれどせめて。





せめて自分で言いたかったな、と
そう思うのはどうしてだろう。





「亜綺からは何も聞いてない」





「…え」





「アイツがなんか知ってるんだろうなってことはなんとなく雰囲気でわかってたけど」





「、」





「どうせ聞いてもあいつは上手いこと躱すだろうし」





「え?」





「だから聞いてないよ」





「…じゃあ」





(じゃあどうして知ってるの、この人)





「…あ、」





そこまで考えて、思い出す。





そういえば、もう一人居た。





私のこれまでを、あわや私より隅まで知り尽くした人。





「──結でもないよ」





「、っえ」





「笠原家は何かと顔に出る家系だから」





「え、え…」






(…なんか)





すごい、ロンさんって。





彼と話をしていると、もしかしてこの世には超能力なるものが存在しているのではないかと錯覚する。





そういうタイミングが何度もあった。





全てお見通しだと言わんばかりの表情でニヤリと笑う彼に、心の底から感嘆する。





でもじゃあ、どうやって。





この人も私のファンだなどと言うのだろうか。


















「──頼まれてね。君のこと」





「頼まれた…?」





「君をよく知る、ある人に」





「ある人…」





今は教えられない、とロンさんは言った。





「『あの子はきっと、自分を押さえ付けてでもバイクを捨てるだろうから』」





「…」





「『走りたいと言わせてあげて欲しい。何を気負うこともないと伝えて欲しい』って」