店内の人足は疎ら。
これだけルックスの良い結さんを店長に擁しながら、予想に反して大盛況、という訳でもないらしい。
尤も。
先日の『暴走』とやらの開催される日を除いて
の話らしいが。
「…それで、さっきの話の続きなんだけど」
「…あ、はい…」
「もしかしてサヨちゃん、誰かになにか聞いた?」
眉尻を垂らしながらロンさんが訊ねる。
私があっ、と喉を鳴らし、綺世にと答えると、彼は苦笑しながらやっぱりねと零した。
「…それで、あの子はなんて?」
「…“朧に入れ”っていうのは、ロンさんが私を好きってことかもよ、って」
「…」
「私みたいな、不良じゃない人間がチームに入るのにはそういう、“ちゃんとした定型”みたいなものが着いて回るんだよって…」
遠慮がちに言葉を吐き出す私に、ロンさんが小さく頷いて言う。
「…うん、そうだね。綺世の言う通り」
考えなくても分かる、明らかな肯定。
言う通りだということは、やはりそういうことなのだろうか。
考え込む私に、ロンさんがまた綺麗に笑う。
「…サヨちゃんは、俺の彼女になりたい?」
「えっ、と…」
答えは…
その場でうんともすんとも言えず俯くと、シトラスの香りが、ぐっと私へ近づく。
「…うん、大丈夫」
大丈夫だから、聞いて。
「君が欲しくなったんだ」
「…」
頭に置かれた手のひらに
やはり、温度らしい温度はない。
けれど。
「もちろんサヨちゃんのことは好きだけど、恋愛感情とか、そういうのは正直どうでも良くて」
「…え、」
風向きが変わる。
「ただ、君みたいなライダーがうちに居てくれたら」
私は歩き出したい。
「、」
たしかに、一歩
今よりも
一歩
「それはまるで夢みたいだって、思ったんだよ」
前へ。
「だから」
「…ロン、さん」
「朧においでよ」
サヨちゃん、俺は
「──最速の君に、興味があるんだ」
