「…えっと、その」
「…」
「やっぱりなんか、変なことになってるね…」
端を発したのは、今から三十分ほど前。
『話をしましょう』と持ち掛けたのは良かった。今日ちゃんと、真相を確かめようと。
彼のあの言葉の意味。
私のことを一体どう思っているのか。
もし本当に、好きだというのなら。
貴方とはお付き合いできませんと伝えなくてはと。
先刻
あの男の元から離れる際に
私から少し離れた場所で、ロンさんが誰かと通話し終えるのを待って
少し話をしたい、と切り出した。
そんな私に怪訝な顔ひとつせず、二つ返事で頷いてくれたロンさんに手を引かれ、気が付くと見覚えあるカフェのドアをくぐっていた。
「いらっしゃいませ、って、あれ、」
(あれ、ここ)
「やほ」
「え小夜ちゃんと、龍?なにこの変な組み合わせ」
「…ん、ちょっと」
「こ、ここんばんは」
「思ったより早い再会だったね。いらっしゃい」
ロンさんが談義の場に選んだその先は
つい先日知り合った、綺世や亜綺くんのいとこ──基、笠原結さんのお店であった。
「デートでもしてた?」
いそいそと二人現れた私たちを茶化すように笑う結さん。思わず彼を責めるような声が出た。
自分でもよく分からない
けれど
「違います」
彼に勘違いされるのだけはなんだか、気が引けた。
