Roadside moon











──やがて呻き声が止む。





どうやら、意識を保ったまま声を出すことすら諦めてしまったらしく





その場にへたり込む男に、ロンさんは膝を屈めて何か耳打ちをしたようだった。





なにを言ったのかは知らないけれど。





地面を見下ろしたまま、文字通り本当に動かなくなってしまった男の姿が、私の目に焼き付いて





同時に





ロンさんが、笑うのをやめた。





「…サヨちゃん」





「…ロンさん、」





「ごめんね」





その彼から、存外に弱々しい音が発せられたことに少しだけ驚いて。





少しだけ、なんだか嬉しくなった。





今この瞬間、この人のこんな姿を見ているのが世界に私一人だけなのだと思うと





ひどく白々しく嬉しかった。





「ごめん」





「…」





「汚いね…」





汚い。





汚いのだろうか。





私には分からない。





あまりにも世界が違いすぎていて。





けれど、一つだけ。





私にも分かるよ。















──“汚い”だなんて





貴方の対角にある言葉だから。





「…いいえ」





だって





「…ロンさんは綺麗です」





だって貴方は





「汚くないです。」





「…サヨちゃん」





「だからそんなこと言わないで」
















貴方には。




きっと “美しい”のほうがよく似合うから。