大切な人の大切な人を。
出来れば私も、嫌いたくはないものだと思う。
大きく首を縦に振った。
しかし。
あと、もう一つだけ。
「…けど、」
「うん?」
「どうやって会えばいいのかな、私」
そもそも。
私は彼に逢いに行く術を持ち合わせていない。
(どうしよう…)
考え込む私に、綺世が言う。
「ああ、それなら多分大丈夫だよ。すぐ会える」
「…すぐ?会えるの?」
「今日学校来るかもって言ってたし」
「え?え学校?学校って、」
「うん」
「ちょ、っと待ってよ」
もしかして、あの人。
「高校生ですとか、言わないよね…」
「うん。正真正銘のDKだよ」
「…………嘘でしょ」
あんなフェロモン男が高校生って。
本当に、どういう世界線なんだろう。
「あれ言ってなかったっけ」
「…綺世ぇ…」
「ごめん、忘れてた」
てへ
舌を出す綺世。
まあ、本当に申し訳なさそうに垂れた眉に免じて許してやろうとは思う。
「でも結果オーライ?この学校にいるんだから。すぐ言えちゃうね」
「…たしかに……?」
「良かったね、サヨちん」
「う、うん」
何故か私より嬉しそうに顔を綻ばせる。
やっぱり怖いよ、というタイミングを失った。
無理だよ。逃げたいよ。
(…言えない)
ならばせめて。
せめて“そのとき”、綺世が一緒にいてくれれば。
「──ねえ綺世、今日一緒に」
一緒に帰ろうよ
普段ならばなんなく通る提案だ。
しかし。
近頃尽く運のない私は
やはり今日も、ひと味違う。
「あっ!」
「な、なにっ」
「やばいバイトだ!行かなきゃ!」
「えっばバイト?授業は?」
「間違えてシフト昼に入れちゃったんだよね、行かなきゃ」
「ちょっとま、待って綺世」
「早退します!お腹痛いとでも言っといて!」
「ま、待って、」
「じゃね!」
「…」
いやだから。なんで。
だから。
「…バイバイ」
だから、なんで!!!
