愛憎

「…えいっ」
取り敢えず、胸。心臓を刺しておけば死ぬよね、と考えて、適当に刺した。
真紅の血が流れる。わっ、汚。服汚れるじゃん。
洗っても落ちそうにないなぁ、これ。私はため息をつき、死体と向き合う。
胸からドクドクと溢れ出てくる血液。うわぁ、私、とうとう殺せたんだ。
もっとやっちゃえ。もっと、もっと。
楽しくて、たくさん刺した。子供の頃に戻ったように、無邪気に刺した。
頭、お腹、足、腕、顔。楽しい、楽しい、楽しい楽しい楽しい。
刺すたびに流れる血液。嫌いな人の血だと思うと汚いけど、嫌いな人を殺せていることが、どうしようもなく嬉しい。
嫌いな人というより、もう死体になっているから嫌いな遺体か？そう考えながら刺していると、いつの間にかバラバラ死体みたいになっていて、ちょっと気持ち悪く感じる。
部屋中に飛び散った血。これは、私が今田心という人間を殺したという証拠。
嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい。ようやく、殺せたんだ。
なんとも言えない高揚感に包まれる。やっと、殺せた。
早く、るいに会いたいなぁ。結果報告、したい。
でも今、話せる状況じゃないからなぁ、気まずいし。アオを使って一緒に話して、復縁したいって言おうかな。
一週間くらいあれば、話せるようになるかな。でも、話しかける勇気ないなぁ。
取り敢えず、この死体どうにかしないと。はあ、面倒くさい。
私、人殺しだ。憎しみの感情から、人を殺しちゃった。
でも、これは愛から来る殺人だもんね。全ては、るいのためだもん。
私はなんにも悪くない。全部、心っていう元人間が悪いんだ。