数分雑談をしていたら、心の呼吸がだんだんと苦しそうになっていく。なんとも言えない高揚感に包まれ、気分が良くなっていく。
「め、ぐる、ゲホッ、はぁっ」
苦しそう。いかにもそんな感じの声で、私の名前を呼んできた、大嫌いな奴。
「たすけ、て」
助けるわけないじゃん、あんたと私は友達じゃないし。友達のフリさせてもらったけど、簡単に人間を信用するなんて馬鹿な奴。
ああ、面白い。完璧な人間が、苦しんでいる姿が。私に縋り付いて、助けを求めている無様な姿が。
苦しそうな心に、一歩一歩、ゆっくりと近づく。
「ねえ、心。苦しい?」
明らかに苦しそうなのに、こうやって質問する私は相当性格悪いんだろうな。
返答は返ってこない。苦しすぎて、返事もできないみたいだ。
隠しきれない笑い。ふふっと汚い物を見るような目で笑って、こう言った。

「私の苦しみ、味わって死んでよ」
今まで受けてきた、あなたからの苦しみ。
あなたが転校して来た時の苦しみ。
彼氏が色目を使われていると知った時の苦しみ。
あなたのせいで別れた時の苦しみ。
彼氏と話せない苦しみ。
あなたが来てから、全部、全部、全部。
あなたのせいで、なにもかもが変わってしまった。
私の苦しみを、全部。味わって死んでよ。

意識が飛んだ嫌いな人。きっとこのまま死ぬんだろうけど、せっかくだから自分の手で殺めたかった。
ズルズルと腕を力強く引っ張って、自分の部屋へと運ぶ。部屋は二階だから大変だけど、階段を登るたびに嫌いな人の身体に傷が付くことが、楽しかった。
また一階に戻り、使い慣れた包丁を取る。階段を駆け上り、また部屋に戻る。
もう十分死体っぽくなっている、嫌いな人。今から死ぬと思うと、どうしようもないワクワクが私を襲う。