「芽流、クッキー食べないの?」
しばらく経って、雑談を交わしていると、芽流がクッキーを食べていないことに気づく。
「うん、私はいいや」
さっきから芽流が、チラチラと時計を見ては、私の方を向くという作業を繰り返している。もしかしたら、何か用事があるのだろうか。
「そっか、ぁ」
なんだろう、さっきから呼吸がしづらい。クッキーを食べた時あたりから、息が詰まるような感覚だ。
「…はぁっ…はっ…」
なんだろう、過呼吸になっていく感じがする。何これ、何これ。もしかして、呼吸困難?
プログラムが上手く動いてくれない。どうしてこうなったのかも分からなくなる。
「げほっ…はっ、あぐっ…はぁっ」
どんどん悪化していっている感じがする。頭がぼーっとする。何も考えられない。
「めっ、ぐる、ゲホッ、はぁっ、たすけ、て」
言葉を出すことすら苦になっていく。芽流は一向に助けてくれようとしない。
なんだろう、視界がぼやけてよく見えない。芽流、笑ってる?
私を見て、笑ってる?

「ふふっ…やっと効き始めたんだ」
「めっ、ぐる」
何を言っているのか分からない。プログラムが動いてくれない。正常に動かない。
意識が遠のいていく感覚がする。苦しい、苦しい苦しい苦しい。
息を吸いたい。酸素を吸いたい。苦しい、苦しい苦しい苦しい。
なんで?どうして息ができないの?何かが詰まっているような感覚。
息ができない。
苦しい、苦しい、苦しい。芽流、助けて。

るい、助けて。

芽流が近づいてくる。助けて、助けて助けて。どうにかして、苦しいよ。
言葉が出ない。息ができない。


「ねえ、心」


「苦しい?」

苦しい。苦しい。たすけて、芽流。

芽流はクスッと笑う。さっきの優しい笑い方とは違う、酷くて、冷たい笑い方。


「私の苦しみ、味わって死んでよ」


視界がぼんやりと、だんだんと狭くなっていく。

意識が遠のいていく。どうして?なんで?苦しいよ。


るい、るい。



るい、助けて。



真っ赤な血が、最期に見えた。