I
心と初めて話したのは、「心マザコン説」が浮上していた頃だった。
仮入部では話せなかったし、すごく後悔していた。けど、「お母さんが入らないでって言ったの。だから私は部活に入りたくない」と、一軍達に向けて言っていたのだ。
それって、自分の意思なの?本当に後悔してないの?って、話したこともないのに言いそうになる。
だって、心が「マザコン」に見えたんじゃなくて、「お母さんに自由と感情を縛られている可哀想な人」に見えたから。
心は、テニス部の仮入部に来たことがある。
たった一回きり。多分、経験したことないんだと思う。
だけど、サーブがありえないほど上手かった。最初は自分の目を疑った。「え、マジで?錯覚じゃないの?」みたいな感じで、数回くらい目を擦った。
その頃にはとっくにサーブが終わっていたようで、るいが何か話しかけに行っていたのが見えた。
あーあ、好きな子と部活ができたら、どんなに楽しいんだろう。勿論今も楽しいんだけど、それはるいがいてくれるわけであって。
先輩達にも、大人達にも、いつも本音を飲み込んでばかりだ。笑顔で自分を偽って本性を見せようとしない、最低女。我ながら、「うわ、私って最低だな。バッカみたい」って思う時がよくある。
心を開けばいいだけの話なんだけど、それがそう上手くいかなくて。
本当の「アオ」は口が悪くてすぐ思ったことを言ってしまうし、全然笑うこともないし愛想も悪い。こんな人間、好かれるはずもないから。
芽流とるいには、唯一心を開けた。二人は「本当のアオ」を認めてくれて、対等に接してくれる。
るいと芽流の前では、自然と笑えるようになった。笑顔でいることが苦痛ではなく、むしろ楽しくなったくらい。
「偽ったアオ」でいると、いつも苦しい。何かに身体全部を固定されているような、妙な感覚にも襲われる。
芽流とるいは、私の救世主。本音で話せる、大切な親友だ。
そんな人に恨みや妬みの感情を向けることなんて、この先一切ないと思っていた。
その時の私は、ずっと、思っている。
心と初めて話したのは、「心マザコン説」が浮上していた頃だった。
仮入部では話せなかったし、すごく後悔していた。けど、「お母さんが入らないでって言ったの。だから私は部活に入りたくない」と、一軍達に向けて言っていたのだ。
それって、自分の意思なの?本当に後悔してないの?って、話したこともないのに言いそうになる。
だって、心が「マザコン」に見えたんじゃなくて、「お母さんに自由と感情を縛られている可哀想な人」に見えたから。
心は、テニス部の仮入部に来たことがある。
たった一回きり。多分、経験したことないんだと思う。
だけど、サーブがありえないほど上手かった。最初は自分の目を疑った。「え、マジで?錯覚じゃないの?」みたいな感じで、数回くらい目を擦った。
その頃にはとっくにサーブが終わっていたようで、るいが何か話しかけに行っていたのが見えた。
あーあ、好きな子と部活ができたら、どんなに楽しいんだろう。勿論今も楽しいんだけど、それはるいがいてくれるわけであって。
先輩達にも、大人達にも、いつも本音を飲み込んでばかりだ。笑顔で自分を偽って本性を見せようとしない、最低女。我ながら、「うわ、私って最低だな。バッカみたい」って思う時がよくある。
心を開けばいいだけの話なんだけど、それがそう上手くいかなくて。
本当の「アオ」は口が悪くてすぐ思ったことを言ってしまうし、全然笑うこともないし愛想も悪い。こんな人間、好かれるはずもないから。
芽流とるいには、唯一心を開けた。二人は「本当のアオ」を認めてくれて、対等に接してくれる。
るいと芽流の前では、自然と笑えるようになった。笑顔でいることが苦痛ではなく、むしろ楽しくなったくらい。
「偽ったアオ」でいると、いつも苦しい。何かに身体全部を固定されているような、妙な感覚にも襲われる。
芽流とるいは、私の救世主。本音で話せる、大切な親友だ。
そんな人に恨みや妬みの感情を向けることなんて、この先一切ないと思っていた。
その時の私は、ずっと、思っている。



