心が転校してきたのは、二年生に進級して少ししてからのことだった。
「あ…こんにちは、今田心です!晴海中学校から来ました!」
一目惚れは、絶対にしないと思っていた。
その人の性格とか全部知ってから、好きになると思っていた。
ましてや、同性の子とか。笑っちゃうくらい、ビックリしてる。
でも、好きになっちゃったんだよね。その子が――今田心は、誰もが見惚れるくらいの美貌を持っているんだから。
芽流とはまた違う、「可愛い、癒し系」みたいな。三秒から五秒くらいで教室に入って来た時の、第一印象はこれ。
でも、ちゃんと綺麗。可愛さもありつつ、ちゃんと「綺麗さ」を持っていた印象。
清楚系だけど、根っからの「美人」ってわけでもなく、「あざと可愛い」ってわけでもなく。
言葉で言うのは難しいけど、人間なのかと疑うほど、心は可愛かった。
私は心に、「ひとめぼれ」をしてしまったのだ。
席が近くなったらいいなぁと思った。
コミュ力も人並みにはあるし、話題提示もできるし。
まずは、名前を覚えてもらいたい。「私、アオ!よろしくね、心ちゃん」って、話しかけたい。仲良くなって、私のことを好きになって――、というのは流石にないと思うんだけど。
でも、もしそうだったら。嬉しい、楽しみ、と言う感情が、どんどん膨れ上がっていく。
そんな妄想をしている間に、今田さんはすでに席に着いているようだった。近くも遠くもない、なんとも微妙な距離感。
マジか、とため息をつく。これじゃあ話しかけることもできなさそうだ。
せめて、部活が被ればいいんだけど。テニス部に来てくれないかな、と考える。
二人で一緒に筋トレをしたり、いろんな技を教え合って、お互いを高め合って――。ついにはあの子と付き合う!とか、まさに夢のまた夢。
性格とか知らないのに外見で好きになるとか、私って意外とクズなんだなぁと他人事のように捉える。まあ誰がどんな理由で人を好きになろうと勝手でしょ、と考えをまとめる。
部活、入ってくれるといいなぁ。一緒にテニス、やりたいな。
あ、でもそこにはるいもいるのか、とちょっと気落ちする。別にるいが嫌とかじゃない、むしろ大事な友達。でも、あの子と二人きりがよかったなぁなんて、思ってしまう。
あれ、私、なんでこんなに妄想を膨らませているんだろう。絶対叶うはずないのに、ましてやまだ友達になってすらいないのに。
私の視線の先には、あの子がいた。前に私と仲が良かった一軍たちに、話しかけられている。
どうやら私はボーッと妄想をしている間、ずっとあの子を見つめていたらしい。うわぁ、自分気持ち悪いな、と思いながらも、あの子から目が離せなかった。
分からない。一目惚れした理由が、外見とか気持ち悪すぎでしょ。
そうやって自分を批判しても、どうしても「それでも好き」って言葉が頭の中に出てきてしまう。
気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。
自分を批判して、それでも好きってなって――。
ずっと、その繰り返し。

今日の日記

・転校生が来た
・その今田さんを好きになった
・可愛い