教室にいるのは、辛い。廊下にいるのも、辛い。
家だって退屈だし、ふとスマホを見れば、俺宛てへの何十件もの通知。
それに嫌気が差して、またスマホを閉じる。そんな毎日の繰り返し。
そんな毎日の娯楽といえば、今となっては絶対に欠かせない、部活の時間。
練習試合をしたり、技を極めるのも楽しい。
二年生になってからメニューを変えて、前はずーっとキツかった地獄の筋トレも、慣れさえすれば案外余裕だったことにも気づいた。
部活って、楽しい。努力が全部、結果に表れてくるから。
苦手な後輩も、アオがカバーしてくれている。慣れたからかそこそこ話せるようにもなったし、何も不利なことはなかった。
部活が娯楽だと思うようになった、一番の理由。
それは、心がいたからだった。
勿論、アオがいるというのも理由には含まれるけど、何より心が入部してから、俺は「素の笑顔」でいられることが極端に増えた。
あの二人となら、本音を言い合いながら楽しく部活ができる。
今は、七月。三年生はそろそろ引退の時期。
引退試合が終わったら、俺たち二年生が正式に一年生を引っ張っていかなくちゃいけない。先輩が今までやってきてくれたことを、受け継いでいかないと。
そんな、寂しくて大変な時期だけど、俺は今までの部活動の中で、「今が一番楽しい」と思えるようになっている。
心も、アオも、俺も。みんなで本音を言えることって、なんて楽しいんだろう。
だからこそ、部活終わりに教室に戻るのが、一番憂鬱だった。
教室には、勉強をして俺とアオの帰りを待つ芽流がいるから。
帰りは、芽流と一緒に帰らないといけないから。アオがいるだけまだマシだけど、二人で帰るとなったら話は別だ。
芽流のことは、好きだ。大好き。大好きなんだけど、最近俺に依存してるなーっていうか。
何をするにもずっと一緒にいたがるし、遠回しに心のことを悪く言っている時も多々ある。
その度に俺は不快になるけど、いつも本音を呑み込むばかりだ。
だから、余計に教室が嫌いになる。廊下も、帰り道も、家庭科室も、全部。
だから、余計に部活が好きになる。心も、アオも、みんな。
決して芽流のことが嫌いとか、そういうわけではない。ただ、ちょっと依存されているだけ。
芽流は悪くないし、俺も悪くない。俺が本音を言えなくなったのは、誰のせいでもない。
俺と芽流をそうさせた、〝何か〟が悪いんだから。