【完結】悲劇の継母が幸せになるまで

エディットや侍女たちが何のことを言っているかまでは理解できなかったが、馬鹿にされていることだけは理解できた。
けれどヴァネッサに抵抗する術はない。


『公爵家に嫁げるなんて羨ましいわ! でもわたしは伯爵家を継がなければいけないのよ。代わってあげられなくてごめんなさいねぇ?』


真っ赤な唇を歪めるエディットは楽しそうに笑う。


『でも、次には生きて会えるのかしら……?』


ヴァネッサは先ほど侍女たちが言っていたシュリーズ公爵の話を思い出す。


『シュリーズ公爵は表舞台に一切出てこない。前妻もみーんな死んでる。アンタも結婚するんだからそうなるに決まっているわ』

『…………っ!』

『しかも七年の間に二人も! こんなの異常よ』


青ざめていくヴァネッサを見たエディットは楽しそうに笑う。


『シュリーズ公爵はアンタを人体実験するために大金を払って買ったの! 今からどんな苦痛が待っているのかしら。体を引き裂かれる? 毒で苦しむのかしら』

『ぁっ……』

『シュリーズ公爵の目は血のような赤なのよ? まるで悪魔のようなんですって! 生き血を啜っているとか。その研究に没頭しすぎて……ああ、怖い』


エディットの言葉はヴァネッサを恐怖に陥れるには十分だった。